佐渡の美味い酒、美味いモンを「私、熱燗小僧」がお届けします ただし、二十歳に満たない方へお酒は売りません

そもそも山廃とは何か

山廃とは「山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)」と言う酒母造り
の省略形の名称です。

日本酒造りの
タンクで発酵させる工程
大きく分けると酒母造り醪造りの二つになります。

醪造りは直径2m以上もある大きなタンクを棒で掻き回すシーンを
テレビで観る事があると思いますが、アレが醪造りです。
力強く育てられた酵母が、麹によって糖化された米の糖分を食べて
アルコールと炭酸ガスに変えていく過程です。(その昔は、この
タンクに転落して命を落とす方もおったそうです)
この過程が約一か月間あり。
その後、搾られて清酒の生酒ができる訳です。


酒母造りはその前の工程を先ず小さなタンクで行う力強い酵母だけ
を育て上げる段階になります。
その培地は水・麹・蒸米です。

期間が長いとされる山廃造りは、この酒母造りに約一か月費やします。
明治の中頃まではこの酒母造りが当たり前でした。
その後、明治の終わり頃に「速醸酛」という10日から二週間で出来上が
る酒母が開発され、今では日本酒造りの八割以上を占めるようになりま
した。

歴史を遡ると生酛や菩提酛という複雑怪奇?な酒造りに挑む酒蔵も僅か
ながらみられます。皆さんそれなりの理由があって、あえて面倒で複雑
な酒造りに挑戦する訳です。

その理由が

山廃も含めて「味わい深く、お燗で美味しく更に熟成するとますます
旨味が増す」という点です。コレまさに、伝統文化の継承
発酵食品は浅漬かりよりしっかり漬かって熟成した物のほうが味わいが
あっておいしいと思いませんか。
同じように速醸酛全盛の今、一見軽い味わいと華やかな香りを放つ酒
とは対照的な「濃醇でコクがあり、お燗で味が広がり…だけどキレも
ある」というような酒造りを目指してそれぞれの酒蔵は日夜研鑽を重
ねております。


この、片や10日前後、片や一か月かかってしまう酒母造りの一番の違い
・・・は酵母が活動しやすい環境を薬品で作るか、自然界の力を利用し
て作り出すかです。

速醸酛は水・米麹・蒸米に乳酸入れ一気に酵母が他の菌・微生物に阻害
されない環境
を作ってしまい、その後丈夫で強い酵母だけを育てていき
ます。
一方、山廃酛は水・米麹・蒸米から始まり温度を上げ下げしながら酒の
酵母だけが活動できるよう自然界から乳酸菌を取り込んで酒母タンクに
乳酸を発生
させます。

この段階に時間と経験が必要なんです。必要なんだそうです。
なんせ目に見えない微生物が実際に生成されているかどうか、昔は数値
で確かめる事も出来なかったでしょうから、まさに杜氏さんの経験と勘
がモノをいう酒造りだったということになりす。
そして出来上がった酒には、時間を費やしただけの味わい深さが表れる
訳です。
こういう事を受け継いでいく事こそ伝統文化の継承と言えるでしょう。

と、文字で書いてみました。写真や映像でお示しすればもっと分り易い
はずです。古い写真を引っ張り出したり、再び逸見酒造さんへお邪魔し
て山廃造りを写真や映像でお示しできるようにします。

今回はこんな説明で終わります。